concept | 構想
一つのプールの行方が、
まちの意思決定を問いかけている。
横浜国際プールのメインプール廃止に反対し、水泳団体が声を上げた記者会見(2024年6月30日)から、2年が過ぎた。国際大会の舞台として、また市民の日常の泳ぎの場として親しまれてきた横浜国際プールは、2026年9月の入札公告で仕様が確定し、2031年3月の開業に向けて再整備が進もうとしている。その議論は、「公共スポーツ施設のあり方を、誰が、どのように決めるのか」という、日本のまちづくり全体に通じる問いを浮かび上がらせている。
公共スポーツ施設は、競技者だけのものではない。泳ぎを覚える子どもたち、リハビリのために水に入る高齢者、限られた競技環境のなかでも華やかな成果をあげてきたパラアスリート、観客席から声援を送る市民——。施設は、多様な人々の暮らしと思いが交差する場所として、まちの一部に存在している。しかし、その施設の未来を決めるプロセスに、当事者である市民の声はどこまで届いているだろうか。「パラ水泳の聖地」はどのように築かれ、必要とされてきたのか。そもそも水泳は、市民の生活や健康を豊かにし、子どもの習い事人気ナンバーワンでもある、もっとも身近なスポーツのひとつだ。
「まちをつくるアスリート」は、横浜国際プール再整備問題を出発点として、公共スポーツ施設をめぐり市民・研究者・アスリートがともに学ぶ研究開発プロジェクトです。当事者へのインタビューを重ね、スポーツに関わることを通じて「知り、知らせ」、価値を育てていく。目指すのは、研究で終わるのではなく、現場・社会で実践し、その成果を再び研究・取材へとつなげる循環です。射程は横浜にとどまらず、全国の公共スポーツ施設と地域スポーツ環境に及びます。
アスリートは、競技の記録や勝敗をつくるだけの存在ではありません。世界中のスポーツ施設を使い、経験に根ざした声を上げ、まちの風景を変えていく——「まちをつくる」主体でもある。その視点から、スポーツとまち、そして民主主義の交差点を記録していきます。
横浜国際プールは、その最初のケースです。このサイトはこれから、「公共スポーツ施設のあり方を考える」場として、全国の施設と地域に目を向け、さまざまな「まちをつくるアスリート」——選手、専門家、支援者、家族、そして生活者——に語ってもらう場所へと育てていきます。
aboutこのプロジェクトについて
「まちをつくるアスリート」とは、競技者のみにとどまらず、スポーツを通じて多様性と包摂に基づいた豊かなまちづくりに取り組む人々を指します。選手も、専門家も、支援者も、家族も、日々施設を使う生活者も——一人ひとりが、まちをつくる主体です。このサイトは、その声を集め、届けるプラットフォームを目指します。
本プロジェクトは、NPOメディア・パラフォトで国際競技に挑むパラスポーツを取材、その魅力を知り、大学院(デジタルコンテンツ研究科デジタルコンテンツ専攻)での研究課題の進行をベースとしています。本当に「誰もが発信できる時代」のWebメディアとは何か?を問いながら、子どもたちが新しい技術を学ぶ「取材の学校」、まちづくりのミニ・パブリックス(座談会)、その記録からの発信、政策提言まで——研究と実践をつなぐ活動を展開していきます。
呼びかけ人/研究者・佐々木延江(パラフォト代表/デジタルハリウッド大学大学院 デジタルコンテンツ研究科デジタルコンテンツ専攻)
「公共スポーツ施設の再編をめぐる言葉とメディアリテラシー——横浜国際プールを事例として」
公共施設の再編は、まず言葉として市民の前に現れる。「再整備」「老朽化」「市民ニーズ」——その語が何を含み、何を含まないのかを、市会会議録と行政文書から検証する。あわせて、市民がその言葉を自ら確かめるための手立て(ウェブメディア、市民アンケート、取材の学校)を実践し、その有効性を検証する。
研究指導:デジタルハリウッド大学大学院 森祐治 教授
※本サイトの記述および見解は筆者個人によるものであり、所属する大学院および指導教員の見解を示すものではありません。
施設と市民のあいだに、
あるべき回路をつなぎ直す。
スポーツ基本法(2011年・2025年)が掲げる「誰もが享受するスポーツを通じた豊かな生活」は、施設という器なしには実現しない。しかし施設をめぐる意思決定は、しばしば市民から遠い場所で進む。本プロジェクトは、報道・調査・対話の場づくりを通じて、施設と市民のあいだにあるべき回路を可視化し、つなぎ直すことを目指す。
障害者の権利条約(2006年・2014年)からも求められる、障害の有無にかかわらず誰もが使える施設、誰もが参加できる意思決定——インクルーシブなまちづくりの実践知を、現場から集め、研究へ、そして政策へと育てていく。
themes取材テーマ
市民・利用者へのヒアリング — 障害の有無を問わず、地域内外の利用者、施設の運営者、障害当事者・団体へ
研究者インタビュー — スポーツ政策・障害・都市計画などの専門家の知見をコンテンツに
行政インタビュー — これからの公共スポーツ施設のあり方への市民参加の可能性を探る
政策の潮流 — スポーツ基本法改正(2011年・2025年)、障害者権利条約(2006年採択・2014年批准)と、時代に合わせた自治体の方向転換
横浜から、全国へ — あなたのまちの公共スポーツ施設と地域スポーツ環境の物語を、CASE 02、03……として取材していきます
on the ground実践の現場
voices語る人たち
このサイトの主役は、「まちをつくるアスリート」一人ひとりの声です。横浜国際プールで育った選手、遠く北海道から思いを寄せるスイマー、トレーナー、元ヤングケアラー、大学教授、建築家、理学療法士、写真家、アートディレクター——すでに全国から、多様な立場の賛同者が集まりはじめています。
スポーツで夢をかなえたい。かなえてほしい。その素直な願いを起点に、一人ひとりの思いを言葉とポートレートにして、順次このサイトで紹介していきます。これまで公共スポーツ施設の問題に関心のなかった人にも、「自分ごと」として出会ってもらえるように。
the cycle研究と実践の循環
研究で終わらせず、現場で実践し、その成果を再び研究へ。この循環を通して、市民の視点から継続的に発信し、学び合い、政策提言へつなげていく。
roadmap2026–2027
- 2026夏〜秋 現状調査と基礎取材横浜国際プール問題の経緯整理、市民・研究者・行政へのヒアリング設計、自治体アンケートの準備
- 2026.10後半 愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会 パラフォト取材プロジェクト取材チームで大会に臨み、パラスポーツのレガシーを深める取材活動を展開する
- 2026.11 「取材の学校」子どもから親世代まで——「誰もが発信できる時代」の取材をどうするか、作戦ミーティング。2027年5月・横浜パラトライアスロンでのritomo子どもカメラマン/アスリートインタビューに向けたスペシャル授業
- 2027.1 「まちをつくるアスリート版 ミニ・パブリックス」開催横浜国際プール問題をテーマに、各方面からの参加者と専門家を招いた座談会。2027年10月の市会議決に向けて「これまで」と「これから」を共有し、新たな技術を装備した市民=まちをつくる主体として何ができるかを考える。大学院修了課題の提出とともに、研究成果を対話の場へ
- 2027.5 横浜パラトライアスロン ritomo子どもカメラマン・アスリートインタビュー取材の学校の学びを、子どもたち自身の取材実践として結実させる
- 2027.5–10 落札者の決定、そして市会の議決へ——政策提言5月に落札者が決まり、10月の市会定例会で事業契約の締結と指定管理者の指定が議決される。制度上、計画が公開の場で問われる最後の局面である。熟議の結果が届く先は、事業者選定ではなく議会である。この段階でできることを見きわめ、「まちは何を失い、何を得るのか」を市民の視点から確認する。その知見を、同様の課題を抱える全国の自治体へ
あなたも、まちをつくるアスリートに。
思いを語り伝える「発信者」を募集しています——選手、専門家、支援者、家族、生活者。横浜国際プールの利用者の方はもちろん、あなたのまちの施設への思いも聞かせてください。情報提供、取材協力、プロジェクトへの賛同を歓迎します。